山下雄彦のこんな本読んだよ。

たくさん読んだ本を、お薦めしたり感想を書いていくブログです。一般教養からサイエンス、自己啓発、人体の不思議と雑食的に本を紹介していきます。

誤解だらけの電力問題  



著者 竹内純子

本著を読んで、電力神話というものはかなり根深いものだと痛感しました。
電力には「神話」が生まれやすいと論じられていますが、確かに間違った固定観念が植え付けられやすく、思考をするにあたって、間違った情報を元に判断したら結果は必ず間違うのは当たり前です。
そして、日本と外国とは電力事情が違いますから、外国がこうだから日本もそれに習った方が良いという考えは非常に危険だというのも認識できるかと思います。

今年から、電力業界が自由化されていろいろな企業が参入しています。しかし、実は日本の電力業界の黎明期は今のベンチャー企業に相当する企業が入り乱れていたことを知ってる人はどれくらいいるのでしょうか?
交流電流の周波数が東日本と西日本では異なりますが、これもベンチャー技業が自分に有利になるように好き勝手にやった結果であったりします。
じゃあ、お前は電力自由化は反対なのか? と、問われたら、「競争がない分野は発展しない」と思っていますので基本的には賛成です。
しかし、電力自由化が必ずしも電力料金が下がるとは限らないということも知っておくべきです。

この辺は、電力事情で日本の遙か先を進んでいるドイツの事例で説明されています。遙か先というと「輝かしい未来」を想像してしまいますが、現実は「誰も幸せになれない地獄」となっています。そして、ドイツの失敗と同じ失敗を日本も犯そうとしています。

ドイツの失敗とは?
一つは、家庭で発電した電力を買い取る仕組み(FIT)の問題点をあげてます。著者は実際に「太陽光発電」導入して明細書をあげてます。注目するのは2点、売電での収入とコスト負担の省エネ発電賦課金です。売電の基本金額は年々下げていくのに対して、コスト負担は年々上がっていく仕組みとなっています。初年度はペットボトルのジュース程度の負担が、レストランの昼食の料金まであがっていくのです。
実際ドイツでは、憲法違反と裁判沙汰になっています。この問題点が顕在化していたのに、日本はこれを導入してしまいました。

二つめ、自由化の弊害についてです。
競争原理が働くとサービス向上されるのは確かですが、それは盤石な経営基盤があってこそなんです。特に太陽光や風力発電は晴れなければ発電をしない、風がなければ(風速がありすぎても)発電しないとなれば、補完として火力発電に頼ることになります。特にドイツは再生可能エネルギーによる発電を率先して使わないといけない法律があるため、火力発電所の効率が非常に悪い状態となっています。
また、電力は供給と需要のバランスが非常に大切で、太陽光や風力が頑張りすぎて電気を大量に作られ供給過多になった場合も停電の可能性が高くなるそうです。こうなると電力会社はお金を払って電気を捨てることになり、経営が圧迫しています。実際にドイツでは2000年から2010年の間に電気料金が1.8倍に膨れあがりました。そして、今は、倒産した電力会社もあり税金を投入している現状となっています。

あと本著は、電力事情を歴史を踏まえて完結にまとめられています。各国の産業用と家庭用の電気料金を購買力平価換算や為替レートで比較を行っていたり、環境問題に対しても記述があります。

ーーーー ここから抜粋 ーーー
実は日本政府は、日本と相手国政府の2国間で協定を結び、日本の技術を導入して温室効果ガス削減を図る、柔軟で実効性のある仕組みを構築しようとしています。この新たな枠組みには、多くの途上国が興味を示しています。
ーーーー 抜粋ここまで ーーーー

でも、なぜか日本では報道されません。
なぜなら、「日本が孤立の危機」と書かないと、本社のデスクに記事を取り上げてもらえないそうです。
こんなところにも、報道しない自由が蔓延っているとはビックリした次第です。

今後、電力会社をかえるかえないを考える上で、電気ってどうやって作られて、家庭にはどうやって運ばれているのか?
海外と比べて日本は本当に劣っているのか? 電気を安くなるのは歓迎だけど、引き替えに何を失うのか?
この電気のことを考える為の材料が、よくまとめられている良書です。
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Posted on 2016/04/23 Sat. 10:09 [edit]

category: 一般・教養

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