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山下雄彦のこんな本読んだよ。

たくさん読んだ本を、お薦めしたり感想を書いていくブログです。一般教養からサイエンス、自己啓発、人体の不思議と雑食的に本を紹介していきます。

神が愛した 天才数学者たち  



著者 吉永良正

数学が苦手な人に、ぜひとも読んでもらいたい本です。

古代ギリシアからフランス7月革命時代の数学者達の生き様を描いた本です。
当事の数学者は、どのような人物を抱えているかで、その国の最先端を誇示する尺度にもなる。
そういう歴史的な観点から眺めてみると、他の歴史本とは違った発見があるかもしれません。
カエサルとか、クレオパトラとかナポレオンの名前が出てきますしね。
そして、時の国王の傍若無人さというのも、ヒシヒシと感じられます。

伝記という形をとっていますから、数学者達の偉業だけでなくその人間性に触れています。
この本を読んで一番ビックリするのが、ニュートンではないでしょうか。
リンゴが落ちるのを見て、万有引力の発見をしたとされている、ニュートンですね。

「万有引力の発見」は当事の科学最先端を走ってるイメージがありますが、実は呪術的なものに手を染めていたり。
私利私欲のために、公私混同甚だしいことを行っていたそうです。例えば、こんな感じで

====引用===
P216
1699年つまり造幣局長に就任して世俗的な名声を手中にした年に、ニュートンは早くも微積分の発明に関してライプニッツの剽窃を告発する文書を王立協会へ送っている。その後、会長の地位に就いてからは、この件に関して「公正な裁定」を下すために「各国の識者多数からなる委員会」を設立。ただし、委員の任命権は王立協会会長すなわちニュートン自身が掌握していた。当事は知られていなかったが、この委員会が出した報告書そのものも、ニュートンが書かれていたことがわかっている。
===引用終わり===

裁判でいうと、原告=裁判官=ニュートン、被告=ライプニッツは欠席の状態で判決が出てしまった状態です。

また、この本を読んで意外思ったのがロシアです。数学者オイラーが活躍した時代、ドイツがまでプロイセンと呼ばれていた頃(正確には違いますけど)の話です。
1756年プロイセンは、オーストリア帝国、フランス、ロシア帝国の共同で攻め込まれました。いわゆる7年戦争です。ロシア軍によってベルリンが占領された時に、ロシア兵によってオイラーの踏みにじられましたが、そこがオイラー宅だとわかると、修復とオイラーに金貨4000枚送って謝罪をしています。
オイラーはプロイセンの前に、ロシアで数学の研究の他に、初等学校用の教科書、ロシアの地図作りと貢献していたため、そのような処置がなされたのでした。

また、数学者達の決闘が、自分が作った問題を相手に解かせるものだったり。
疫病を鎮めるための神のお告げが「神殿を2倍のサイズにしろ」でありました。
市民達は大喜びしました。こんなの簡単じゃないかと、早速2倍の神殿を作りましたが、いっこうに疫病が絶えません。
著名な賢者を招いて、原因を究明してもらうと。
「馬鹿者、各辺を2倍にしたら、体積は8倍になろうだろう。これでは、神の怒りを増やすばかりだ」

では、あなたならどうやって神殿を設計しますか? 使えるのは目盛りの付いてない定規とコンパスだけです。
という、遊びをやってましたとさ(笑)

21世紀の現代と比較すると当事(前時代)の世界観を受け入れられない気持ちになりますが、こういう時代が無かったら、確実に数学の進歩は遅れて、今の科学の世界も遅れたものになっていたでしょう。
人類の歴史はいろんな角度から伺いでき、学校で習う公式は過去の偉人の血と涙と意地と誇りで培われたものだと知れば、勉強に対して姿勢も変わるかもしれません。

少なくとも、「この公式って何に役に立つの?」という疑問は、その公式が生まれた背景を知ることで軽減できると思いますし、実はこの本は数学がちょっと苦手な子供達に興味を持ってもらいたいが為に書かれた本であります。


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Posted on 2015/09/23 Wed. 15:30 [edit]

category: 一般・教養

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