山下雄彦のこんな本読んだよ。

たくさん読んだ本を、お薦めしたり感想を書いていくブログです。一般教養からサイエンス、自己啓発、人体の不思議と雑食的に本を紹介していきます。

蜜蜂と遠雷  



著者 恩田陸

全編通して清々しい気分で読み終えることができました。
日本で行われたピアノの国際コンクールの一次予選から始まり、二次・三次予選と本戦までの短い期間を扱っているので疾走感が凄まじかったです。

主人公は3人の天才と1人の非天才のお話です。
英才教育を受けながら、柔軟な思考をもった天才、マリオ。
神童と称えられていながら、母の死を切っ掛けにピアノの世界から姿を消した天才、アヤ。
生涯弟子を取らないで亡くなったと思われていた巨匠の最初にして最後の弟子である天才、ジン。
年齢制限のため、これが国際コンクール最後の舞台となる音楽家、アカシ。
(一応この作品の人物の名は漢字表記されてますが、よりによってこの「字」を選ぶかよ。的なシーンがありますので、ここではカタカナ表記にしてます。キラキラネームじゃないのでご安心を)

これらの4人が織りなすストーリーです。疾走感が凄いのはコンクールの準備期間である部分が省かれているから。正確にいうと主人公達のバックボーンを説明するのにアカシ以外はコンクールとは関係の無い話が使われています。
逆に言うとアカシ以外は、コンクールは一つの通過点であったり、恩人に乞われたからであり、欲しいものを買って貰うための手段だったりするため、コンクールを題材にした他の作品のようなドロドロしたものがありません。

アヤの付き人をかって出たカナデは、この三人の天才がライバル同士なのにあっけらかんと遊んでいる姿を見て、疎外感を受けるシーンや君たちが遊んでる相手は競争相手なんだよとヤキモキしてるシーンは共感できます。

もう一人の非天才であるアカシは天才達と審査員の力量に舌を巻きますが、この天才達と同じ場に立てたことを素直に感謝するようになっていきます。その辺りの心の動きも本作品の魅力になっています。

少し物足りなさを感じたとすれば、本当に人間のドロドロした部分が無い点。主人公サイドはともかく、冒頭で審査員も派閥があるところや、審査員長の商業的な臭わせていたので、純粋な主人公と邪悪な大人達の対比を期待してたので余計そう感じました。もっとも、一過性の「嫉妬」に近い描写はありましたが、自分にはちょっと弱くもう少し掘り起こしてもらいたかった。もっとも、それを行ったら蛇足になるのは目に見えてますので、不満ではないのですが。

個人的にかなり面白いなと思わせた部分は、ジンのピアノの調律のシーン。
審査員の一人が「彼は、おそらくまともな指導を受けていない」とジンのことを見抜いていましたが、その言葉どおり、プロのピアノの調教師が唖然とすることをジンからお願いされます。
また、オーケストラとの音合わせでも異端さ発揮して団員の反感を持たれますが、彼の実力を目の当たりにして彼の指示を心そこから納得していきます。この辺りの描写を読んでいて、背中がゾクゾクしていきました。

冒頭にも書きましたが、最初から最後まで清々しく本を読めたのは久しぶりでした。
ベストセラーになったのも納得です。
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Posted on 2017/07/30 Sun. 09:53 [edit]

category: 小説

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